(鹿児島県十島村小宝島)
入社30年目のリフレッシュ休暇として10日間をもらい、鹿児島県十島村<吐噶喇列島>の全島制覇を企んでいたが、初日に乗るはずだったフェリーが台風10号のために欠航してしまった。渡航困難度Sクラスとうたわれた吐噶喇列島である。簡単には受け入れてくれない。あらかじめ用意していた代替案の天草諸島を3日でこなし、吐噶喇列島唯一の交通機関であるフェリーとしまの7/23(月)便の運行決定を待っていた。
十島村ホームページのフェリーとしまの運行状況ページが更新され、
条件なしの出航が決定した!これで念願の吐噶喇列島へ行ける!この後台風が来なければ3往復するフェリーを乗り継いで5島(上図✖️の平島・中之島以外③〜⑦)を歩くことができる。まだ予断を許さないが、とりあえずホッと胸をなでおろす。
鹿児島港南埠頭で南西諸島行きフェリーは発着する。マッサージをタップリ受けて銭湯にも入り準備完了。切符発売の19:00にフェリーの待合所窓口に行った。今回、直前での変更だったので、寝台が取れず二等しか予約できなかった。窓口で指定席が割り当てられ、降りる港ごとに客をまとめていた。
これが二等、いわゆる雑魚寝部屋だ。とはいえ場所は指定席になっていて、荷物棚と隔て板が備わっている。敷きマットの幅は800mmくらいだから、隔て板が無かったら
隣の人の顔が目の前にくる感じ。隔て板で最低限の快適さが保たれている。最初の寄港地である口之島は着5:00(定時)だから真っ暗。口之島から中之島に行く途中で朝陽が上った。
中之島着6:00(定時)。台風10号のせいで、今回この島には降りられない。
中之島・諏訪之瀬島間から振り返って中之島を眺める。洋上の富士山だ。
諏訪之瀬島着7:10(定時)。列島唯一の活火山の島。
平島。名前と反して全然「平ら」ではない。平家伝説があるから平島なのだ。しかし、吐噶喇列島はどの島も急峻で、とても人が住んでいるとは思えない様相ばかりだ。
平島着8:10(定時)。ここも今回行けず。平島Tシャツを着たスタッフが乗降デッキを準備しているが、なかなか船の動きがおさまらない。平島と小宝島は港の条件が悪く、波の具合でランプウエイ(車両乗降用)が下ろせなかったり抜港されたりする。今日のような比較的良い日でも船揺れがおさまるには時間がかかる。ところで、スタッフとはいっても船会社の方ではなく、島民の方々が手伝っているのだ。
奇祭ボゼで有名な悪石島。「悪」とはすごい名前だ。聞いただけで行きたくなってしまう。
悪石島着9:15(定時)。出た「悪」Tシャツ。如何にも悪そうだ(冗談)。こんな地名やっぱり珍しいでしょ。
そして、吐噶喇列島最初の上陸地である小宝島が見えてきた。妊婦が仰向けに寝転がっているように見える島影と聞いていたが、本当にそう見える。
小宝島着10:45(定時)。予定より遅れて11:30着。鹿児島港を出て12時間だ。
今まで見てきた吐噶喇の島々と比較して、この島は小さく山も低い。
フェリーとしまは、最後の寄港地宝島目指して港を離れた。奄美大島の名瀬港でしばし停泊したのち折り返し、明日の朝5:50に再びやってくる。それまでが、小宝島探訪の時間だ 。
小宝島 宝島の北東約15kmにある吐噶喇列島の南から2番目、隆起サンゴ礁でできた周囲3kmほどの小さな島。かつては「島子」「島子島」と呼ばれていた。島に上がればアダンやガジュマルが繁り、道路脇にはハイビスカスが咲き、心和む佇まいを見せている。ウネガミ、オオブチ、モガイといった立神奇岩がそびえ立ち、平家の落人が隠れ住んだという大岩屋の洞窟がここにもある。サンゴ礁の割れ目では、色鮮やかな魚が泳ぎまわり、ちょっと離れた洋上の小島では、無人島体験もできる。(「シマダス」参照)
小宝島はゆっくり歩いても1時間弱で一周できるほど小さい。猛暑の中、いざ取材開始。
集落の中のメインストリート。ハイビスカスが咲いていて綺麗だ。
今宵お世話になる「民宿いこいの森」の別宅、92歳のおばぁちゃんの家。この島では古い方だと聞いたが、戦後の民家。吐噶喇列島は沖縄と同様、戦災にあっているので、この島に戦前の建物は一切ないといわれた。
これが吐噶喇の民家だ。とてもシンプルな寄棟の平屋建。金属折板屋根は、鹿児島県内の離島民家の現代のスタイル。
石塀やブロック塀で敷地を囲む。
琉球の集落みたい。珊瑚石の野積の石垣石塀が残っている。
建物の方は、屋根が寄棟に金属折板、壁が木板縦張りである。
島全体が岩石でできている。小宝島の民家は、50年くらい前まで草葺屋根だったという。背後の山の上から竹を刈り取ってきて、それを屋根材として葺いたそうだ。
十島村立小宝島小中学校。校舎の後ろに見える岩は赤立神。人口の少ない離島では、大方このように小中学校である。
今時の小中一貫教育を昔からやっている。島の子供達は中学卒業と同時に島を離れていく。小中学校の前から海岸沿いに近代的な建物が並ぶ。十島村立小宝島へき地診療所。
ちなみに村民の健康診断は年一回5月に実施されていて、「レントゲン船」と名乗る船便が運行される。各島を約2時間づつ停泊。レントゲン車が出てきて、人もペットも健康診断を受ける。この便、2日間で往復し、各島を2時間停泊するので、2日間で全島巡るツアーも同時に企画されている。
簡易郵便局と十島村出張所。フェリーの切符は前日にこの出張所で購入しておかなければならない。
鉄筋コンクリート造の住宅が並ぶ。教職員住宅のようだ。
小宝島温泉センター。夕方、ここに入ろうと思って扉を開けたら使われていなかった。前に事故があってそれっきりだとか。
集落内のメインストリートに戻る。珊瑚石の石垣石塀は沢山ありそうだが、植物に覆われていて確認できない。
この家も古そうだ。屋根はチョイ入母屋で波型折板の白塗装。しかし壁は木板である。南西諸島の鹿児島県内は壁から屋根から全て折板という仕様の民家をよく見る。これをカッコいい建築だなぁと思うのは私だけか。
鉄筋コンクリート造の民家。軒庇に水が侵入して鉄筋が錆びてコンクリートが爆裂している。塩害が厳しいのだろう。
小宝島の集落は平らな場所にあるから津波に弱いだろうと思っていた。でも海抜9mある。そこそこ大丈夫そう。ちなみに海岸には防波堤はなく、津波避難路も無かった。
ハイビスカスの道。
パイナップルみたいな木があると思ったら、入り口になっていて、奥に鳥居がある。
鳥居の更に奥に石碑があって、平仮名で「ごんげん」と書かれている。琉球の御嶽にような場所か。でも、トカラハブに噛まれたくないので入らなかった。
湯泊温泉。ここは湯泊港という入江があって、そこを見下ろす位置に露天風呂がある。
入口にサインがあるので入る時は注意。この手の露天風呂にはあまり興味のない私だが、とても綺麗にしてあって入ってみたいと思った。島を一周した後、タオルと着替えを持って行った。画像では手前が湯船で向こう側に広い洗い場があるように見えるが、実はそこも湯船。横に渡してある板は湯船の蓋で、それを外して入るのだ。
私、洗い場だと思い込んでズカズカと蓋の上を歩いてしまった。蓋がしっかりした材を使っていたので助かったが、もし折れたりしたら、熱湯の中にドボン、大火傷を負うところだった。
湯はとてつもなく熱いので、ホースで海水を入れて湯温を調節する仕組み。大きな湯船の温度を簡単に下げられる訳はなく、水を体に当てながらちょっとだけ浸かった。
島を半周すると奇岩が沢山ある場所になる。隆起した珊瑚石が風や波で削られたのだという。この岩、ゴジラみたいといわれているが、どっちかというと可愛い感じがする。今注目の「シャンシャン岩」というのはどうだろう。
小宝島も平島と同じく平家伝説がある。画像は、大岩屋と言われる洞穴で、平家が隠れたという伝説がある。
フェリー発着する小宝島港。隆起珊瑚礁の島には川がないので泥が流れず海が綺麗。遠くに見えるのは宝島。
吐噶喇列島七つの島の港には必ずこのコンクリートプラントがある。
赤立神。珊瑚石でできた浜辺。海水浴場になっている。
民宿で食事を終えたら、おかみさんが「月見に行くぞ」とフェリー乗り場の突堤に連れて行ってくれた。常連客と島の方々で夕陽見・お月見をしながら一杯やってる。そこに合流させてもらった。しばらくすると月の明かりだけになる。月や惑星のなんと明るいことか。そして、遠くの宝島の街灯も明るく見える。こういうことは小さな離島でなければ体験できないことである。一生忘れられない時間となるだろう。