(長野県伊那市)
「天界の村を歩く」というテーマで関東山地、南アルプス東部を終え、甲州街道を北上し茅野から杖突峠を越えて南アルプス西部に移動しました。ここで伊那市長谷(旧長谷村)の山岳集落を取材しましたが、次回の大鹿村と合わせてレポートします。
伊那北駅前のホテルに泊まり、夕食をとるために町に繰り出しました。
食事の後、街を徘徊。あらかじめ調べていた、「有楽街」というアーケード街を見に。伊那市駅と伊那北駅のちょうど中間です。なんでここにという場所です。
わずか50mくらいのアーケード街を抜けると、高遠へ通じる金沢街道で、歩道上に屋根のかかった「サンモール入舟」商店街です。
金沢街道と国道153号線との交差点「入舟」の地下道入口。わざわざ地下道を造る場所でもないのに。でもこの
入舟交差点こそ、かつて川港があった場所でした。サンモール入舟を過ぎると夜の飲食店街。その中にレトロな建物を活用した居酒屋がありました。玄関に「橋場歯科」とありました。
小沢川沿いの建物内の通り抜け路地、スナック街です。
川向かいに怪しげな建物がある。錦町の入口。
さらに伊那市駅方面に行くとまた怪しげな建物を発見。うーむ、これは遊里に違いない。
ググってみると「錦町新地」という夜の飲食店街でした。
JR飯田線の西側を平行する通り町商店街。何気ない地方都市のアーケード街と思いきや、建物の形に注目!洋風看板建築がズラリと並んでいるではありませんか!これはちゃんと取材せにゃあかん!
小沢川から眺める中央アルプス(上上)と南アルプス(上)。天気が回復したんで山に行きたいけれど、伊那をやり過ごす訳にはいきません。
昨夜見つけた怪しげな建物。これはかつて妓楼だったようで、現在は「くろねこ」という蕎麦屋さんです。
色気のある窓。
色気のある柱。よく残ってるなぁと感心します。そこから錦町に入っていく。
「旭座」名前からして劇場なのか映画館なのか。昨夜は暗くてよく見えませんでしたが、赤い屋根が片側だけについている?ではなく左手前の建物が当初はなかったのでしょう、左右対称だと思われます。
裏にある「旭座2」。こっちはかつては成人映画館だったようですが、今はお子様向け映画館。
なるほど、「錦町楽天地」って言われていたんだ。歓楽街の代名詞。
信州らしくナマコ壁の蔵があった。ここを抜けると昨夜興奮した錦町新地があります。
変わった看板建築。
伊那市駅南の踏切近くにある漆原醸造所。
JR飯田線と通り町商店街を横切って西へ。ここにも料亭らしき建物あり。工業都市として戦後賑わったのでしょう。
銭湯「菊の湯」
そして、昨夜びっくりした洋風看板建築群。夜見た時はあまりにも時代が揃っているので、ショッピングセンターのファサードをわざとレトロに造ったものではないかと疑いましたが、これは紛れも無い戦前の建物です。
これは、大正8年に大火があり、その復興建築であるため、同時代、つまり大正期の様式になっていると思われます。
「橋場歯科」の居酒屋。看板じゃないですね。
入舟有楽街アーケード。さて、ここから東へ天竜川を渡って金沢街道沿いの町並みを歩きます。
伊那古町というこの商店街は、サンモール入舟の川向こうに位置します。
見事な看板建築の町並み。
後ろには庭と蔵が備わっています。
伊那古町の看板建築ですが、通り町商店街の古典様式系のものとは異なり、全てが装飾を廃したモダニズム系です。しかしモルタル洗い出しではなく銅板金だ。モダニズム+銅板金は、看板建築のふるさとである東京ではあまり多く見られません。また、後ろへの片流れなので、前面のオデコが大きいのも特徴です。
看板ではない町家がありました。でも外装は銅板。
モダニズム+銅板金の看板建築
銅板の緑青が美しい商店。段々になっているのは屋根の形が片流れのため。
伊那にこんなレトロな町並みが残っていたとは、今まで気づかなかった。思わぬ出会いに感謝です。